行政書士が絡む判例分析(非弁行為にあたり違法

東京地裁平4(ワ)7470号
平成5年4月22日民事第一七部判決
判例タイムズ829号P227~P232

結論
遺産分割に関して行政書士が行った業務について、相続人の調査や遺産分割協議書作成などは行政書士の職域となるが、紛争性を帯び、相続人と折衝した行為は弁護士法第72条違反にあたる。

裁判の概要
行政書士(原告)が、報酬を支払わない依頼者(被告)に対し、相続手続きの報酬を請求した裁判となります。その中で依頼者以外の相続人と折衝した行為があり、その件に関しては弁護士法第72条違反、いわゆる非弁行為にあたるため、報酬は請求できないとの判決が下されたものです。

弁護士法

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

この判例における非弁行為違反以外の注目ポイント
・遺産分割協議書を作成し、依頼人以外の相続人に遺産分割について依頼人の意向を伝え、内容の説明を行ったことは、行政書士法第1条の2における「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成の範囲内としたこと。
・行政書士(原告)が司法書士に所有権移転登記の依頼をしたことについては、行政書士の業務の範囲外であるが、依頼人(被告)から原告に依頼したものとして報酬請求を認めた。

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