行政書士が絡む判例等の分析(家系図の作成は行政書士の独占業務ではない

最高裁平20(あ)第1071号
平成22年12月20日第一小法延判決

結論
個人の鑑賞ないし記念のための品物として作成された家系図は、行政書士法第1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たらない。

判決を踏まえた行政書士会連合会の見解
観賞用又は記念用の家系図作成は、行政書士法第1条の2第1項にいう行政書士業務に該当しないことから、職務上請求書を使用して戸籍謄本等を請求することはできない。

裁判の概要
行政書士でない被告が、行政書士である共犯者と共謀し、家系図の作成を行い、その行為が行政書士法第1条の2第1項違反ではないかと問われたケースです。

行政書士法

第1条の2第1項 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

裁判補足
結論や連合会の見解としては上記の通りなのですが、本件では被告が手数料を支払って共謀行政書士から職務上請求書を取得し、戸籍請求を行っています。この行為は、最高裁が理由で戸籍法違反の不正行為であるとし、今後は戸籍法133条違反で処罰することになるだろうと締めくくっています。

行政書士法第1条の2第1項「事実証明に関する書類」とは
宮川光治裁判官の補足意見として、「事実証明に関する書類」の内容は、「官公署に提出する書類」に匹敵する程度に社会生活の中で意味にを有するものに限定されるべき、と解釈されていました。そして、行政書士法第1条における「行政に関する手続きの円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資する」という立法目的からしても、限定解釈されるべきであるともしています。

「事実証明に関する書類」に関する行政書士会連合会の見解
「事実証明に関する文書」については、「われわれの実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいう」という基本的な判例がある(大九・一二・二四大、刑録二六-九三八)。今回の判決をこれに重ねてみると、要は、観賞用又は記念用として作成・使用されるものについては、上記「…証明するに足りる文書」には当たらず、行政書士の業務とされている事実証明文書には該当しない、と判断したものと理解するのが相当である。
もとより、遺産分割協議等の際などに法的に作成を要する、親族関係図や相続関係説明図等の作成については、今回の判決は何ら関係ないことはいうまでもない。

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