相続時に遺されている財産を分けるために、遺言がなければ遺産分割協議が必要です。そして遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。
この全員というのが曲者で、これまで疎遠だった親族からいきなり相続の連絡がきて、内容に異議はないが、なんとなく態度を保留している(返信しない)相続人がいる場合があります。
電話連絡などの手段があれば、相続に関する様々ことが話せます。ただ住所しか分からず、文章だけだと伝えたかった内容について話ができず、事が長期化する可能性があります。
ここで登場するのが調停です。家庭裁判所に申し立てることで、遺産分割の調停を行うことができます。
調停とは「調停委員を交えた自主的な話し合い」のことです。web会議の形式も採用されていますので、遠方に住まいの方との話し合いも可能です。
もし家庭裁判所からの調停の通知があれば、なんとなく態度を保留していた人も対応してくれる可能性が高まります。もちろん裁判所からの通知が届くということで、態度を硬化させる可能性もありますので、いきなりではなく、事前に書類で連絡しておくなどの工夫は必要になります。
遺産分割の調停の注意点としては、調停(話し合い)が不成立のときは、必ず審判に移行するということです。逆をいえば、調停が成立すると審判は行われません。特殊なケースとして、調停に代わる審判が行われて調停→審判の流れが終わることもありますが、今回は省いてお話します。
なお審判とは非公開で口頭弁論もなく、当事者の陳述を聴き、家庭裁判所による事実の調査もあって審判されるものを言います。対して裁判は、請求の根拠や反論となる意見を提出し、口頭弁論を経て判決が下されるものを言います。
遺産分割調停には審判が控えていますので、トラブルが想定される場合は調停の申立てから弁護士に依頼するとよいでしょう。
遺産分割調停の申立て自体は、最高裁判所のWebにコメント付きの記載例があり、質問があれば家庭裁判所に聞けばよいので基本問題ないですが、審判となると話は別です。自分の主張を通したければ、一定以上の法律の知識と主張の根拠となるものの収集能力などが必要になります。精神的&時間的な費用対効果を考えると、弁護士に依頼した方がずっと楽ということも考えられます。
遺産分割審判は法定相続分に従った分割が行われ、裁判所が相続分を増減できないというのが建付けです。法定相続分に従った分割といえば均等に分けるものと捉えられがちですが、あくまで基準であるので、審判の途中で相続分を譲渡する意志を明確に示していた場合などは、それに沿った審判が行われることも十分考えられます。
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