うちの親と叔父の仲が悪くて、相続が揉めた!

この記事は、相続で揉めた事例を小説風にしたてて、相続についての解説を随所にいれたものになります。

中年の男は、スマホのディスプレイを見た。表示されていたのは見たことがない番号だ。
営業の電話かもなと思いながら電話を取ると、「お久しぶり浩二くん・・・」と年配の女性の声が聞こえてきた。

初老っぽい声は叔母で、内容は相続についてのことだった。
「そういえば親父より、お爺ちゃんの方が後で亡くなったんだったな・・・相続か・・・」

浩二が呟いたのは、代襲相続についてです。
遺産は配偶者と子供が存命していたら、まず亡くなった人の配偶者と子供に分配されます。
浩二の祖父の遺産相続であれば、浩二の父が相続人であるはずですが、浩二が呟いたように被相続人(お爺ちゃん)より子供(父)の方が先に亡くなってしまうと、父の権利分がその子供たちに移ります。これを代襲相続といいます。

後日改めて父の弟である叔父の妻である叔母と浩二が話したところ、土地の名義を変更する代わりに、お金を渡すので、署名押印をして欲しいというものでした。
最初から叔父から連絡がなかったのは、その理由を浩二は何となく察していました。
浩二の父は、浩二が乳飲み子のときになくなりました。それゆえ浩二には父親の記憶がほとんどありません。ですが5歳上の兄から、叔父が父の車をもっていった、浩二たちの母親への当たりが強かったなどを聞かされていました。
父の死因は自殺したときいています。憔悴していた母に、車を返せなどの反論する気力もなかったのだろうと浩二は推測していました。

「土地は畑ばっかりのようだから、代わりにお金(代償金)をもらった方が後々楽だよなあ・・・でも母さんや兄ちゃんが何というかな・・・」
浩二の兄弟は3兄姉です。本来ならこの3人で代襲相続するはずですが、姉は数年前に病気で亡くなっていました。そしてその姉は結婚をしておらず、子供もいなくて遺言もなかったので、母に姉の相続分の権利が移っていました。

被相続人の遺産は、配偶者とその子供たちにまず分配されると話しましたが、子供がいない場合は、被相続人の親→(親が死亡していた場合)祖父母→兄弟の順に相続権が移っていくことになります。
被相続人が高齢で亡くなった場合で祖父母の戸籍を取ろうとすると、市役所によっては(明治のものなどが必要で)戸籍を保有していない場合もあります。こういった場合は、(破棄)証明書などを発行してもらい、戸籍を調査しましたが市役所等にて戸籍がありませんでしたという証拠が、法務局や銀行等の書類提出で必要になっています。

今回の相続おける相続人を改めて確認しておきましょう。
被相続人(亡くなった方)は浩二の祖父、子供は2人いて、配偶者である祖母は先に亡くなっています。
子供は浩二の父とその弟の2人、つまり本来であれば相続人は2人ですが、祖父より父が先になくなったので、浩二たちの3人に父の権利が移り(姉の権利は浩二の母に権利が移っている)、相続人は合計で4名になっています。

浩二は、母と兄に叔父からの代償金の提案を話しました。
2人とも代償金をもらう代わりに、相続手続きをすること自体には反対しませんでした。しかし過去の叔父の行動から、不信感をもっており、被相続人であるお爺ちゃんが亡くなった後にお金を引き下ろしていたのではないかと考えていて、何も分からない現状では署名押印できないと言ってきました。

土地の名義変更と同時に、預金の相続手続きも話があったので、浩二は母と兄にこう提案してみました。
「通帳の取引履歴を見れば、お金の流れは一目瞭然だから、それを取ってみる?」
通帳の履歴をみたところ、祖父の死後に引き落とされたお金はありません。死亡日以前に、50万ずつを連続で引き下ろしているなどの不自然なお金の引き下ろしも見られませんでした。
浩二は通帳の履歴をもって、母と兄に通帳には不審な点はないことを説明し、相続手続きを進めることに異論がないことを確認し、叔父に連絡をつけて相続手続きを進めることにしました。

今回の相続では、浩二が仲介役として動いていなければ、相続は勧められず、最終的に決着するためには、調停や裁判に訴えるしか方法はなかったと思います。
相続においては疎遠な親族と連絡を取り、署名押印をもらう必要が出てきます。ふとしたときに日ごろの行動が足をひっぱりかねないので、そのところは頭に入れておきたいところです。

一番の対策は遺言を作り、かつ遺言執行者を設定しておくことです。

例えば親と同居している相続人が遺言執行者に設定されている場合、その人が遺言書に書いてある分の相続手続きが可能になります。もちろん遺言執行者は、行政書士などの士業に委任することも可能です。

遺留分侵害額請求

民法には相続人を守る法律(民法1042条等)があり、亡くなった方の子供であれば相続分を何ももらっていないとき、法定相続分の2分の1の金銭を請求できます。これを遺留分侵害額請求権と言います。
例えば相続人が2人で、1000万の預金すべてを長男が相続したとしましょう。次男は法定相続分の500万のうち、1/2の250万を長男に対し請求できるのが遺留分侵害額請求権となります。

夫婦だけで子供がいない場合に遺言のたすき掛け(夫婦相互に遺言を書く)が推奨されているのは、この遺留分侵害額請求権が絡んでいます。亡くなった方の親がいない場合は、配偶者と亡くなった方の兄弟が相続人となります。
全ての財産を配偶者に残す旨の遺言を書いていると、兄弟には遺留分侵害額請求権が無いため(民法1042条1項本文)、夫婦で培った財産を取られる心配も、手続きが増える心配もなくなります。
兄妹に財産を取られる心配がないとしても、遺言書を書かないで相続が始まると、遺産分割協議書に亡くなった方の兄弟の署名押印が必要になるのですが、遺言があるとその心配もなく残された配偶者は相続手続きができるので、子供がいない場合の夫婦は遺言を書くことが推奨されています。